9時間15分の記録・・・

ひとちが

2014年02月28日 19:18

2014/02/23

勝利の後の転落・・・
虫倉山
(妙高山周辺エリア)

全山行 403回



虫倉山の情報はこちら

予告編はこちら
前編はこちら



標高 虫倉山 1378.1M
天気 晴れ
山行時間  9時間15分

〈コース〉バス停脇(9:00)-虫倉神社(さるすべりコース登山口)-
不動滝コース分岐-神社-山頂(3:00-3:20)-不動滝コースへ-
あずまや-分岐-金倉板-不動滝登山口(4:30-5:00)-不動滝林道-
太田上バス停-バス停脇(6:15)




イヤな予感がした

ひとしさん
まさか橋から落ちたりしないよね?






後編


朝だぁー

長野の町中の公園で車泊
(まるでホームレスのようです)


朝食を済ませると目的の山に
車を走らせた



町から少し離れれば景色は雪深い


標高を上げて里の中の雪の壁が続く
県道401号をノロノロと走っていく
(いつものことですが)



ズーム



鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳
そして針ノ木・蓮華岳の美しい姿


本日 ひとちがが選んだコース
さるすべりコース


名前のごとく七つある登山コースの中でも
急登の鎖場が何ヶ所もある難関コースなのだ


虫倉山は安山岩や凝灰角礫岩の山で
絶壁が多い事でも有名


そんな山なのに なんで難関コースを
登ろうとするの?
それに雪山でしょ? 無理なんじゃない?



そうなんだけどねぇー

そこを
あえて登ろうとするのが ひとちが


周遊までしようっていうんだから
無謀もいい所



だってさぁー
夏道なら さるすべりコース 
往復2時間ちょいで行けるんだよ
雪山で倍かかっても
なんとかなるんじゃないかな



そうですね
登りは急なコースを登れば
なんとかなるかも



甘ぁ~い


この安易な計画が
後に大変な事態 になることは
知る由もない


計画では 虫倉神社に駐車して
周遊するつもりだった


実際 県道はともかく 
民家の周りは除雪してあるものの
神社までは雪が積もり登れない


どうしますか?


道の広い場所に
路肩駐車するしかないよ




狭い道を民家の横を通過し登っていく



民家の上の畑まで来ると
突然道がなくなった



や 道がなくなったわけじゃなくて
除雪してある部分がなくなった
と言った方が正しい


げっ
ここからラッセルなわけね



覚悟はしていたものの
先日の大雪で雪はかなり深い上
危険な さるすべりコースを登ろうなんて
考える登山者はいないらしく・・・


こんな時は
こいつにおまかせ



下方向を見れば
こんなステキな景色が広がっていた



あのぉー
ここからの景色で十分なような
気もするんですけど



ひとち 出だしから
そんなんで大丈夫?



わかりません


それでも登山口がある虫倉神社まで
ワカンでふくらはぎ上程度の雪道を
ひたすらズボズボ登った



ワカンがなかったら
確実に膝上くらいウマりそうだね



そうでしょ!
ワカンあって正解



さてさて
ようやく登山口にたどりついた



登山ポストがあるから
登山届を出して行くことにする



だってさぁー
たぶん このコース登るの
ひとちがだけだよ
万が一遭難したらヤバいじゃん



そうだよね
出していった方がいいよ



駐車場はこんな状態



春の雪解けまでは使えない


更に道を登っていくと
ようやく虫倉神社の階段にたどりついた

ところが

手すりはあるものの
階段に積もった雪は深い上に滑って
なかなか登れない



それでも 山に入らせていただくのだから
せめて安全祈願だけはしなければ 
と這い登る



鳥居を潜ると 雪の綿帽子をかぶった
神社の社殿が待っていた



いやぁー
ここもスゴい雪ですねぇー



あれ 見て!



二匹の狛犬たち
まるで白い洋服を着てるみたい



ここからが本番
神社の右から登山道にとりつく


赤テープも随所にあり迷うことはない
でも やたら雪が深い


ズボ ズボ ズボ


雪質は湿っていて重い



ワカンに雪がくっつくので
足はさらに重く ちっとも進まない


不動の滝コースとの分岐に到着


今日は周遊なので この近道コースに
不動の滝から戻る予定なのだ


案の定 不動の滝からも
誰も登山者は歩いていない



いよいよ傾斜が増す



最初にラッセルをかってでたのは
ひとしさんだった


よっしゃぁーっ


元気のいい掛け声と共に
雪の尾根道をラッセルしながら登って行く


ズボ ズボ ズボ



どこまでも続く急登



次第に疲れてくると
発する言葉はこれのみ



がんばれ ひとち!


ひとしさんばっかに
まかせるわけにもいかないので
ちがこさんも参戦


赤テープごとに順番にラッセル


中間地点より若干上の大岩直下の神社に
ようやくたどりついた



小さな神社の上には10メートル以上はある大岩
地図には神社の左を巻いて登山道は記載されている


ん?
この大岩の横を登るんだよね?



そうみたいですね


覗いてみれば 雪は深く積もり
岩の横は恐ろしい岩と雪の壁の急登


ピッケルでも
太刀打ちできそうもない




そこって 夏道なら
鎖がついてる場所じゃないかな



たぶんそうですね


*無積雪期の神社横 大岩の鎖場


無理を承知で途中まで
あえぎながら登ってみた


ダメだこりゃ



とてもこの壁は登れそうもない
どうすりゃいいのか?


あのぉー
私 ここで敗退していいですか?



え゛
なんで?



時間はまだ十分ある
ここで敗退などありえない


岩の横がダメなら
山の斜面を這い登るよ



無積雪期なら到底登ることができないような
急斜面を這い登ることにした


あきれた顔で ひとしさんは
高みの見物


一つ間違えば ひっくり返るような急斜面


滑って落ちれば一巻の終わり
なんとしても這い登らなきゃ



雪はサラサラではないのでつかめた



ストックをザックにくくりつけ
両手で雪をつかみ ズルズルと滑る足元と
格闘しながら ジリジリと這い登る



身体が冷えて寒くなってきました


神社の前で高みの見物をしていた
ひとしさんもようやく重たい腰を上げた


ちがこさんが道を作る
ひとしさんもそれに続く



ハァ ハァ ハァ



難関の大岩横の急登を登ると
案の定赤テープがしっかりついていた


よっしゃぁー


そこから先のラッセルは ひとしさん
再び 例の「くそー連発」が始まった



標高が上がるにつれ
益々傾斜は激しくなっていく


こーなったら這い登るしかない


再び ちがこさんが先頭
雪をつかみながら山斜面と格闘


あっ!



それまで あまりに傾斜がキツイため
転がり落ちることを考慮

安全確保のため 後方で ひとしさんが待機

時に ちがこさんのお尻を押し上げ
ここまで急登を這い登ってきた


ちらりと雪の中から顔を出していた鎖を
思いっきり引っ張って引きずり出す


えーい
えーい



深く雪の中に埋もれた鎖は
一筋縄で出てくるわけもなく
それでも懸命に引っ張った


ゾリゾリゾリ

ガシャガシャ
ズボ

鎖が雪の中から抜けた


後ろを振り返ると滑り落ちそうで
コワいので振り返らないことにする


横には枯れ木ごしに
美しい景色が広がっていた



ガシャガシャ
ズボ


次々と頼りになる鎖を見つけては
なんとか引きずり出し確実に登っていく



それにしても
いったい何本あるんだろね
この鎖は




冬場よく目にする
鎖から手が滑って滑落 という記事


今回 ちがこさんが細心の注意を
心がけたのは 鎖のつかみ方



こーすれば グローブをしていても
滑って手を放してしまうことはない

*但し この持ち方をすると
腕に鎖がからむため 後にアザを作ることになります



命には代えられない


ようやく空が近づいたころ
先頭を歩く ちがこさん力尽きた



残りのラッセルは 
ひとしさんにバトンタッチだ



気合を入れて登っていく 

ひとしさんが叫んだ



山頂まで到達できた
紺碧の空が眩しい



360度の大パノラマ
ひとちがの貸切




あれ?
ちがこさんは?




グロッキー


山頂まで1時間ちょいのコースは
倍どころか5倍の時間がかかった


危険な場所もあったしね
でも よくがんばったじゃん



そうでしょ!


それではお楽しみの景色を
ご覧いただこう


こっちは草津・志賀方向



でもって こっちは上田市方向



そして下山コース



鹿島槍ヶ岳から白馬 そして立山



山の先は長野の町



嬉しいことに山頂には
望遠鏡が設置されている


ズームして見れば さぞかし山々も
良く見えるとおもいきや



こんなもんです


再びトレースのないコース開拓
周遊するためにはラッセルするのみ



下りだから楽ちんじゃないの?


まぁね
登りよりは ずっとマシ



稜線に沿ってアップダウンしながら
あずまやを通過し左へ



下り斜面になると 雪は深くなり
ウマる ウマる



金倉板なるポイントまでは順調に進んだものの
そこから先はコースは不明瞭になった


いいんですか
本当に こっちで?



方向的には間違ってないと思うけど
たぶん行けるっしょ!



また始まったよ
ちがこさんのいいかげん



不安そうに ひとしさんが
後をついてくる


しばらく急坂をデタラメに下って行くと
なんとトレースがあるじゃまいか


あ~ よかった



たぶんこのトレースからすると
5人程度のパーティーか?

途中で敗退したらしく
不動滝登山口から近くして
登るのを断念したようだ


順調に登山口に到着



ここから近道すれば問題なく
下山できるはず


敗退したパーティーは林道方向から
登ってきたようで ひとちがが進む
虫倉神社方向にトレースはない


しばらく進むとイヤな物が

橋だ


登りですっかり体力消耗した ちがこさん
登山口からは ひとしさんが先頭を歩いていた


目の前にある橋は
お世辞にも安全に通過できるとは
思えないような感じ


いつもなら危険な場所があると
「どうします?」
と必ず ちがこさんに尋ねる ひとしさんは
時間が押していることもあり焦っていたのか
ずんずん橋を渡ろうとした


ヤバよ その橋


橋は丸太二本分
その上には30センチ程雪が積もり
ひとしさんが乗ったら 
折れてしまうんじゃないかと思われた


山斜面が崩れすり鉢状になった場所に橋は
架けられているが もちろんつかまる場所などない


橋の上から滑り落ちれば
下まで10メートル以上は転落するはず


橋を渡らずに山斜面を
トラバースしようかとも考えた


崩れた山斜面が危険だからつけた橋
山斜面を無理にトラバースすれば
斜面ごと崩れる可能性大


どっちにしても危険


その上 橋の先は這い登らなければ進めない


橋の先に立っている看板は 
危険」と書かれているのだろう


*ちなみに無積雪期の橋の先はこんなです


崩れやすい山斜面のトラバース
雪が積もり 鎖は姿形もない


今は 無敵の雪山


もし 橋を無事通過できたとしても
先の鎖場を無事通過できるかは不明だ



ヤメようよ
やっぱり危ないよ
時間かかっても林道下ろうよ



ちがこさんの言葉が聞こえたのか
聞こえなかったのか?
ひとしさんは橋を渡り始めてしまった



イヤな予感がした


ひとしさん
まさか 橋から落ちたりしないよね?



橋のたもとで ひとしさんが橋に
かかった雪をストックで払いのけ
少しずつ進むのをじっと見る


狭い幅の橋の上をワカンを履いたまま
横向きになって渡る姿は 見ている方が
ヒヤヒヤする


ワカンについた爪は不安定で
雪の上とは違い 橋の上は
天狗の一本下駄を履いてるみたいなもんだ


危険すぎる


一瞬 先頭を歩くべきだった と後悔
いつものように ちがこさんが前を歩けば
橋はたぶん渡らなかったと思う


ちがこさんが渡らないような橋だから
相当危なく見えたんだね



うん


あと一歩で橋の反対岸という場所まで
ひとしさんはまるでサーカスのように
順調に進んで行った


またイヤな予感がする


最後の雪を橋から払いのけた瞬間
転がり落ちるかも・・・



予感的中


ストックを振り下ろした瞬間
無言で ひとしさんは橋から落ちていった


ザザー



え゛
どうしよう
ひ ひとしさぁ~ん
大丈夫?



声がしない


もしかして打ち所が悪くて
声を発することができないのか?


大きな声でもう一度叫ぶ


ひ ひとしさぁ~ん
だ だいじょうぶなわけ~?



はい
大丈夫ですぅー
でも登れません



落ちたすり鉢状の枯れ沢を
無理やりよじ登ろうとする ひとしさん


この期に及んでも まだ橋の上まで
戻ろうなんて気がしれない



感心してる場合じゃないでしょ!


あっ そうだった


周りを見渡せば 少し沢を下れば
ちがこさんのいる場所までなんとか
這いあがれそうだ


ひとしさぁーん
そっちのコースは諦めて戻って



戻るに戻れません
どうしましょう



待ってて迎えに行くから
ひとしさんも沢下って



わかりましたぁー


転がり落ちるようにして
山斜面を下った


怪我なかった?



大丈夫ですぅー
コロンと足から落ちて
ズズーっと斜面を滑り落っこちましたから



よかったぁー


どうしますこれから?


ど どうしますって 林道帰るよ
いくら時間が短かろうが危なすぎて
橋の先にはいけないよ
ちがこさんには無理だから



そう そう
その方がいいよ



辺りが暗くなりピンボケになりました・・・


暗くなること承知で
林道を下ることにした


先人のトレースと林道歩きということで
気持ちが楽になった



暗くなってもいいじゃん
ヘッデン持ってるし



そうですね


民家が見え始め 道路歩きになったころ
里山はすっかり暗くなった





またしても無敵の雪山ニ登ってしまった


危険といつも隣り合わせ
そんな山歩きはしたくないけど
したくなくても 越えなきゃならない場所も
時にはあるのだ


但し
命がけだけはゴメンだよ


時間にゆとりをもって
無理な計画・危険な場所がある登山は避けましょう





この日の立ち寄り湯はこちら
裾花峡天然温泉 うるおい館
二日連チャンでお気に入りの温泉へ


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