不幸なおじいさんの話 Ⅰ

ひとちが

2017年03月14日 15:44

2017/3/14

誰も信じてくれない・・・
入歯の行方




現代社会、高齢者が激増している
私達はどのように関わっていけばよいのだろうか?

いずれ「高齢」という現実に自分たちも向き合う時がくる
その時、手をさしのべてくれるのは若い人たち そう願いたい

今 目の前に助けを求めている高齢者がいたとしたら・・・
手をさしのべるのは この記事を読んでいるあなただ
迷っている場合じゃない、どんな形でもいいから動いてみよう!






思い込みが激しい老人の話

昨年10月
すえたろうさん(ちがこさんの父)が腹痛を訴えた
ゴロゴロ腸が動くらしい

聞けば 就寝時に入歯を呑みこんでしまったとのこと



呑み込んだ入歯は小腸を通過し大腸の中を右に左に
時には上下に移動し暴れながら進んでいるという



大急ぎで入歯を作った歯科に問い合わせたが
大きさ的にも呑み込む可能性は低いとの回答
それでも納得のいかない すえさん訴え続けた

*たぶん入歯は すえさんがどこかに置き忘れたのだと思います



昨年11月
あまりにしつこいので整形外科でレントゲン撮影

もし入歯が入っていても もう出ちゃってると思います
入っているとしても入歯の掛け金部分が写るはずですよ




実際、入歯なんて入っていないのだからレントゲンに写るわけがない
肩をたたかれて自宅に戻された すえさんであった

ヤブ医者め 3mも先から写真なんか撮ったって
腹の中が見えるわけないじゃないか!


入歯の存在を譲らない 



昨年12月
毎日のようにトイレにたてこもり
腸に潜伏している入歯の動きを気にする すえさん



しつこく入歯の話を何度もするもんだから
呆れた ちせこさん怒り爆発、夫婦内に亀裂が入り始めた

このままじゃ熟年離婚ならぬ 枯葉離婚になり兼ねない

今度は内視鏡で確認してもらうために胃腸科へ
長々と入歯事件を訴えたものの再びレントゲン



入歯の姿なし と内視鏡の検査は却下された

やる気のないヤブ医者め
あの病院は何もしてくれないバカ医者だ


怒りマックス 

心の中で思った

ダメだよ すえさん
だって入歯は入ってないもん


どうやって説得すればいいのか?



今年1月
ひとしさんを筆頭に ちがこさんもインフルAを発病
続いて別宅に住む 花&コハがインフルB
ちせこさんが大風邪でダウンと すえさんどころでない

半月あまり家族が病んでいたので しばらく入歯の話は
することなく すえさんの存在も影が薄かった



今年2月
元気になった家族を横目に すえさんは元気がなくなり
食事の量が減り ついに食べなくなった
おまけに血便が出るようになった

まさか 入歯が腸を噛みついているとか?
ありえない ありえない

すえさんが言う信頼おけない胃腸科とは別の病院にかけこむ
これまでのいきさつを話し血便の原因を探ることに
出された薬は食欲改善と整腸剤

こんなんじゃ 入歯は出ない

すえさん納得がいかない



今年3月
体重が10キロ近くも落ちてしまいすっかり痩せてしまった



とうとう胃腸科では手に負えなくなり大病院に検査入院

まずはCT検査



検査が終わり病室に戻ってきた すえさんが言った

出たぞ 出たぞ!
ガーガーガーって大きな音の機械に入って ウトウトしていたら
先生が入歯を引きずりだしてくれた


CTで入歯が出るわけないじゃん

検査で使われた造影剤は時に眠くなるそうだ
すえさんは夢の中での出来事を信じているようだった

家族内で目で合図
CTと魔法の手を持った先生のおかげで
入歯は無事 すえさんの腸から出たこととする



嘘も方便
たとえ真実が事実と異なっていたとしても
本人納得した方がすっきりするもんね
高齢者を説得するのは大変だ

翌日は内視鏡で血便の原因がわかった
本人は入歯に噛みつかれた傷で出血していると信じ切っていたが
実際は全く違うものであった
身も心も軽くなった すえさんは二日間の検査入院を経て自宅に戻った

終わりよければすべてよし 

*長い間ご心配おかけしましたが すえさんは少しずつ回復しています
高齢のため心臓機能の低下、前立腺がん、痴呆と課題はたくさんありますが
家族であたたかく見守っていきたいと思います




不幸なおじいさんの話Ⅱはこちら
不幸なおじいさんの話Ⅲはこちら


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