不幸なおじいさんの話 Ⅱ

ひとちが

2017年03月15日 15:50

2017/3/15

突如訪れた災難・・・
乗れなかったバス



不幸シリーズは続く・・・ 



気丈な老人の話

二週間ほど前のことだ
すえさんの通院の帰り道 車は大通りに出た
後部座席に すえちせが ちょこんと乗っている



交通量の多い道なので交差点付近は直進する車が
すごいスピードでビュンビュン走っていた

のろのろと左車線を走っていると交差点の先の歩道に
倒れている おじいさんを発見した



きゃぁー
おじいちゃんが転んでる!




やだよー どうしただか?

懸命に起き上がろうとしているらしいがフラフラして足元が危ない
助け起こしてくれる通行者もなく おじいさんはピンチのようだった

道を走る車はスピードを落とすことなく倒れている おじいさんを横目に
ビュンビュン通過していった

交差点付近なので停車するのは危険だし車を寄せる場所もない
緊急事態 無理やり路肩に車を停車させた

おじいちゃん助けなきゃ!
ちせこさん助けに行って!


小走りで おじいさんのもとに駆け寄る ちせこさん
ハザードを出して ちがこさんも後を追う



助け起こした おじいさんを見れば悲惨な状態
顔面から転んだらしく鼻は擦り傷で血だらけ
手のひらも負傷 血が止まらない

おじいちゃん大丈夫?
大丈夫じゃないよね どうしたの?


握った おじいさんの手は冷たかった

バスに乗らなきゃ・・・

手には何も持っていない
この老人はバスに乗ってどこに行くつもりなのか?



おじいちゃん バスには乗れないよ
こんなに血だらけじゃ バスには乗せてもらえないよ


大急ぎで車に戻りテッシュで止血を試みる
傷ついた鼻や手の血液はなかなか止まらない
たちまちティッシュが山になった



ともかく車に乗って
お家まで送っていくから


バスが行っちゃう・・・

聞けば20m程先のバス停から町中の図書館に行こうとしていたようだ



何も持たずポケットに小銭と図書カードを入れて出かける
図書館で重い本を借りて持ち帰ることもしない老人の気ままなお楽しみ



中途半端に履かれた靴が仇となった



図書館はまた違う日に行けばいいよ
今日はお家に帰ろうね


それでもまだ諦めきれないのか
名残惜しそうにバス停方向を見つめていた



目の前にあった工務店に駆け込み おじいさんのことを聞いたが誰も知らない
仕事中とはいえ困っているお年寄りに無関心な人たちに少々腹が立った

無理やり車に おじいさんを押し込むと家まで送り届けた
おじいさんの家は市営アパートの最上階(3階)
おばあちゃんと二人で暮しているそうだ
今日は生憎 おばあさんはお出かけで留守とのこと

一人で大丈夫?

大丈夫 大丈夫・・・

そう答えると気丈に自宅まで戻ろうとする おじいさん
車の後部座席に黙って様子を伺う79才の すえさんよりはずっとお元気だ

87才という高齢なのに一人でバスに乗って出かけるくらいだから
身体も頭脳もしっかりしているのは認める
でもね ピンチの時は一人でがんばらなくてもいいんだよ

手すりにつかまりながら階段を上っていく おじいさんを見送りながら
一刻も早く おばあさんが帰宅してくれることを祈り分かれた

二日後 市役所に用事があり知り合いに声をかけた
転んだ おじいさんが心配で気になっていたからだ
名前も知らない おじいさんの家に押しかけるわけにもいかない

市営アパートの管理をしている市役所なら おじいさんの安否を
確認してくれるかもしれないと思ったから

夕方 市役所から電話があった
おばあさんと連絡がつき おじいさんは大丈夫とのこと
大事に至らなくて本当に よかった よかった



不幸なおじいさんの話Ⅰはこちら
不幸なおじいさんの話Ⅲはこちら


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