終わりよければ すべてよし!

ひとちが

2010年08月16日 13:38

2010/08/13・14
聖岳
南アルプス


全山行 193回
百名山 38座




標高 聖岳 3013m

天気 ガス
山行時間 28時間10分
距離 33.10km


〈コース〉13日・自宅(2:30)-畑薙第一ダム・夏季臨時駐車場(6:45/バス)-聖登山口(7:45)-造林小屋跡(10:20-10:30)-聖平小屋(2:10)

14日・聖平小屋(4:10)-山頂(7:10-7:20)-聖平小屋(9:10)-登山口(?)




タイムリミットは 昼12時ジャスト。
登山口の下山ルートの山行タイムは平均4時間45分。
現在の時刻は9時10分、たった2時間50分しかないのであ~る。

「2時間も山行タイムを縮めることなんて できるわけないじゃん!」

そして・・・
ひとちがの無謀なる挑戦が今始まった・・・・
最終バスに間に合うことができるか ひとちが!!






駐車場までの車でのアクセスは長く、クネクネと曲がる山間の道路は体調不良の ちがこさんには最悪の状況。
(ふぇぇぇ~ん)
車がカーブで揺れるたび 気持ちが悪く本日の山行の行く先は雲行きが怪しい

「ちがこさん、大丈夫?」
ようやく夏休みに入ったばかりの ひとしさんとしては楽しく車中を いつもじゃぁ ひとりしゃべりまくっている ちがこさんが無言で大人しいのは不安で仕方ないのであ~る

「うん・・・ 大丈夫だよぉ」
答える ちがこさんも大丈夫という割には力もなくクジケ気味だ。
せっかく計画していた山行が おじゃんになるのは忍びなく、気合だけで今回の山行を続けることを決意していた。
(本当に大丈夫なわけ?)

ようやく畑薙ダム臨時駐車場に到着、去年は手前にあったゲートは取り除かれ 時間を気にすることもなく早めに車を駐車できたのは予想外、すでにたくさんの車が駐車されている駐車場に ひとちがも乗り込む!
(よっしゃ)



今回の山行予定〉 

初日:聖登山口→聖平小屋
2日目:聖岳→兎岳→中盛丸山→大沢岳→赤石岳非難小屋
3日目:赤石岳→椹島ロッジ


初日の聖平小屋までは6時間であ~る。
バスを降りた たくさんの登山者と共に いよいよスタート
(うりゃ)



2日目に宿泊予定の 赤石岳非難小屋はテントを張ることができない、ってことは 3000円のバス代をチャラにするためにも小屋泊しなければいけない現状があるわけで・・・
(うはははは。)
ザックの中身は 食料と着替え、いつもより少なめの水と前回の甲斐駒山行より やや軽めであ~る

ところが・・・
楽しいはずの登り、ちがこさんの体調はやっぱりすぐれない
いつも元気な ちがこさん!
どうしちゃったの?

歩けど 歩けど 一向に回復しない体調と闘う ちがこさん。
周りをキョロキョロする気力もなく 必死で登る。
が・・・

はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ・・・・
息が荒く余裕がない。

「大丈夫?」
後方を歩く ひとしさんも心配を隠せない

吊橋の横で たくさんの登山者が休憩中。
しかぁ~し、ひとちがは進む!
混雑がキライな ひとしさんと 少しでも早く山小屋に到着したい 体調不良の ちがこさんとしては休んでいる暇はないのであ~る。

 

長いトラバース道を通過、たくさんの柵を越え、九十九折の急登をがんばって歩く。



やっとこ さっとこ 乗越をクリア、岩頭滝見台に到着。
(ふへぇーっ)



流れ落ちる白い滝、水の流れが ひとちがを ホッとさせてくれた。
見上げれば 聖岳が大きく姿を見せてくれている



あ゛――――っ
長かったぁーーーーっ


ここまでは樹林帯と登りの連続だったから
ほとんど休憩することもなくここまできちゃったもんねぇー

実際・・・
ちがこさんは 登ることが必死で ほとんど地面しか見ていないのであ~る。
ってことは ポイントをよく覚えていないってこと!
これが後に大きな悲劇を生むことになろうとは 予想もしない ひとちが・・・

そこからは!
夏の花が咲き乱れる露地を通り、せせらぎを横切り・・・

  

 

    

わぁ~ぉ♪
トリカブトが満開じゃん!!




 

小屋までの花畑を ゴキゲンで歩く ひとちががいる

小屋に到着、時刻もまだ早いのに すでにテント場には カラフルなテントがひしめき合って並んでいる。
(お盆は混みあうんですな)
小屋の前にも 小屋泊の人たちか? なんでこんな山奥に こんなにたくさんの人がいるのかと思うほど・・・



さっそく手続きをしよう。
予約はいっぱいで ひとちがの今夜の宿泊は 山小屋の隣にある 冬季避難小屋。
(えっ)
通常なら6人のスペースを8人で使うとのこと。
混雑してるんだから仕方ないけど 山男に挟まれたら ちがこさんが可哀相と ひとしさんがお願いして 一番すみっちょにスペースをもらった。
(よかった よかった)

はい!
こんなんですよ!



5時、ちゃちゃっと食事を済ませ すでにシュラフに潜り込んで フガフガしている ひとちが。
次々に到着し、賑やかになった小屋の中で じっとしている・・・
(あれ あれ・・・)

天気は怪しい。



予想は 台風一過で明日は 気持ちのよい稜線歩きを楽しむはずなのだが 外は霧、気温も高く雨をもっている。
(はぁぁぁーーーっ)

う~~~~ん
明日は あまり期待できそうにないぞぉー

ちょびっと ちがこさんはクジケ気味
天気もそうだけど 体調がやっぱしイマイチから脱出できない。
明日の長丁場の稜線歩きが不安であ~る。
(やっぱし・・・)

予約していた登山者も山の天気が荒れ模様のため キャンセルが続出、結局 窮屈な思いをすることなく 柱と ひとしさんに挟まれた ちがこさんは ぐっすり眠ることができたよ

ひとしさんは どうだったのかな?

「私は 交互に寝ていた隣のお兄さんに 何度も ボカッと蹴っ飛ばされて大変でしたぁー」
と ブゥたれていたけどね!
(ははははは。。。。)

真夜中、雨が強く降る音で目が覚めた。
『やっぱり予定変更しかないのかなぁー』



早朝3時。
チチッ チチッ
小さな目覚ましの音が 静かな小屋に響いた。

がばっ!!

飛び起きたのは 目覚ましの持ち主だけじゃない!
(へっ?)

そう・・・
小屋の ほぼ全員が 暗闇の中、ヘッドランプを装着し ゴソゴソと荷物をまとめ始めた。

うっへぇーーーーっ!!
み、みなさん なんだか 
やたら早くないですかぁー?



どうやら ひとちがが宿泊した小屋は ほとんどの人は素泊り、小屋の食事やお弁当ができるまでの時間を のんびり待つ人はいないらしい・・・
4時には ほとんどの人が 自分達の目的場所に向って旅立っていった。
(お見事!)

ちがこさん、体調は?

う~ん、やっぱしダメみたい

それでも ひとちがも暗闇の登山道を 聖岳に向けて出発
本日は 11時間は歩かなければ避難小屋までたどりつけないからね。



ところが・・・
天気がぁー、ガス
ヘッドランプの光は 反射して登山道が見えずらい。
必死で コースアウトしないように 目を凝らしてコースを探すのは 先頭の ちがこさんだ。

ようやくヘッドランプがいらなくなり夜が白々と明けた始めたころ 森林限界を抜け山の斜面をカッパを着て登る ひとちががいた。
(よくやります・・・)



おえぇぇぇーーっ

時々 吐き気を催す ちがこさん

「大丈夫? 無理しない方がいいんじゃないかな・・・」
心配する ひとしさん。

「うん、大丈夫 大丈夫!」
ちがこさんは それでも進むつもりであ~る。
(無理しないほうが いいんじゃないの?)

なんとか小聖岳に到着



危ないガレ場のヤセ尾根にさしかかった。



風が強くガスは 霧状になり目の中に飛び込んでくる。
大きなザックは 風にふられて よろけまくる ちがこさん



ひょぇぇぇーーーっ
こ、コワイじゃん!!




低姿勢になって進むしかない



おや?
岩場に座っている若いご夫婦が・・・

「この天気ですから 私は帰る気マンマンなんですが 妻が進むっていうんですよ。」
笑いながら余裕たっぷりの すらりとした山男のご主人。
どうやら進む方向は ひとちがと同じらしい。

「では 山頂でお会いしましょう」
山頂まで無事たどりつけるかどうかわからないのに この若いご夫婦は その先を進むかどうか モメてるっていうんだからスゴイ!

と、とりあえず ひとちがも がんばれる所までいくつもりだけど

益々風は強くなった。
景色どころか 吹き荒れる風と霧で 足元を見るのが背いっぱい。
ともかく 風で吹き飛ばされないように 慎重に進む。
(がんばれぇー)



「ひとしさぁ~ん、明日も天気が大荒れだっていうし、今日非難小屋までは この風じゃ歩ききれないよ、ザックをデポしてとりあえず山頂までがんばろう・・・」

ヤセ尾根のハイマツの間にザックを捨てて 身ひとつで山頂に向かう。

更に風が強くなった。
砂礫の大斜面の急登は 荒れ狂った状態であ~る。
(きゃぁーーーーっ)

ひとちが ぴーーーんち!



う、動けない・・・
限界かぁー?

「どうする?」
ひとしさんが じっと ちがこさんを見る。
山頂まではあと30分足らず。
いつもなら 「進む!」と間違いなく答えるであろう ちがこさんだが今回は違った。

「このまま進んでも 危ないし、体調不良を考えれば やっぱり下山した方がいいよね」
残念だけど仕方ない・・・

下山開始。
10分も下っただろうか?



先ほどのご夫婦とすれ違った。
そして更に下る。
(後味が悪い、、、)

げっ!
たくさん登ってくるじゃん!


この悪天候の中をものともせず カラフルなカッパを着た登山者が列をなして斜面を登ってきた。



ひとちが顔を見合わせる・・・

や、やっぱり登りますかぁー
半分クジケていたのに なんだか元気がでてきたぞぉー

ひとちがも負けちゃおれん
くるりとUターン
山頂目指してゴー

再び風と戦いながら山頂までどうにか登りきった。

やったぁーっ!!



ガスガスの山頂、天気がよければ最高の展望であろう。
が 本日は山頂標識のポールに必死で風と戦いながら しがみついているのが精々であ~る

先ほどのご夫婦とも合流、記念撮影♪
奥さんは 元ワンダーフォーゲルのバリバリの山女であった・・・
どうりで この天気でもへっちゃらなわけだ。
(うはははは!)



がんばったね、ひとちが・・・
こんな天気でも ちゃんと山頂まで登れたじゃん♪
(うん、うん)

いつの間にか ちがこさんの体調も回復方向に向っている。
下山開始、ひとしさんのデポした 黄色いザックカバーがガスの中に ぼんやりと浮かび上がって見えた。



早朝に暗くて見ることのできなかった小屋の近くのお花畑



    



山小屋に到着。



いつもじゃ フツウに下山して終わるのが ひとちがの山行であ~る。
ところが、ここからが問題だった

予定では 赤石岳の避難小屋に宿泊し、椹島ロッジに下る予定だったから 東海フォレストのバスに乗る予定が 井川の観光協会のバスに乗るしかない。
なのにバスの時間は調べていなかったのであ~る。

山小屋でバスの時間を聞いた。
「すみません、聖登山口から観光協会のバスに乗りたいんですけど 最終バスの時刻は何時ですか?」

「最終は12時ジャストです。慣れた人なら間に合うかもしれません、しかし それは天気がよくて登山道が危なくない状態であればですね・・・フツウの人は無理かなぁ、でも今すぐ出発すれば もしかすると間に合うかも・・・」

えええええええーーーーっ!

タイムリミットは 昼12時ジャスト。
登山口の下山ルートの山行タイムは平均4時間45分。
現在の時刻は9時10分、たった2時間50分しかないのであ~る。

「2時間も山行タイムを縮めることなんて できるわけないじゃん」

しかぁ~し、観光協会のバスに乗り遅れるってことは次の選択をしなければいけないってことだ。

1、 聖登山口まで下山したら 椹島ロッジまで40分かけて歩き椹島ロッジに宿泊、翌日東海フォレストのバスに乗る。

2、 聖登山口から 畑薙の駐車場まで5時間かけて歩く。

3、 乗れないなら このままもう一泊 聖平小屋に宿泊して翌日観光協会のバスに乗る。

究極の三択であ~る。
さぁ、どうする ひとちが?

そして・・・
ひとちがの無謀なる挑戦が今始まった
無理を承知で観光協会のバスに乗ろう

最終バスに間に合うことができるか ひとちが

お腹がすいた・・・
パンをちぎって 口に詰め込む、水を飲むゆとりもない。
山小屋を飛び出した!

ともかく 走る! 
走るしかないのであ~る。

本来なら・・・
登りでコースを楽しむことができなかった ちがこさんは のんびり花を眺めたり写真を撮ったりと下っていきたかった。
(ふぇぇ~ん)

でも 今回は違うのだぁー!!
後方で ひとしさんが叫ぶ!

「ほれほれ 走って! 間に合わないよぉー」

危ない斜面でズルズル滑り、気の根っこでけっつまずいて何度 ちがこさんは転びそうになったことか・・・
それでも走り続ける・・・

丁度 南アルプスを縦走して抜けていく トレランの大会が催されていた。
まるで ひとちがも選手のひとりのようだ。
ただ彼らと違うのは でっかい重たいザックを背負っていることと、ちがこさんが走っているという割に 他から見ると走ってるんじゃなくて 歩いているようにしか見えないこと
(あちゃ)

でも 本人は必死。
下りで こんなに ゼエ ゼエ 言いながら喉をカレ枯れにして下るってのは 初めての経験であ~る。

登りの際にコースをきちんと見ていないので ポイントごとに何分かかるのかさえわからい・・・
だだ ひとしさんの 「もっと早く走って」という言葉を聞きながら ひたすら下り続けるのみ!

横っ腹が痛い
給食を食べたてで 走るマラソンの授業のような。
でも休むわけにはいかない!
時間は待ってはくれないのだから・・・
(そう そう)

ようやく 長い九十九折の急坂を下り 吊橋を渡った。
そこから先は更にコースの記憶が不明瞭、いったい登山口まで何分でたどり着けるんだろう?
地図を確認する余裕なんてない

後方の ひとしさんは半分すでに諦めていた・・・ 
『このペースじゃ 無理だろうな』

トラバースの道に入った。
意外アップダウンがある 長いコース。

下りですでに膝が ガクガクな ちがこさん、しかぁ~し、登りは順調。
(よっしゃ)

はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ
ゼェ ゼェ ゼェ ゼェ ゼェ・・・

ものすごい勢いで坂を登る。
そしてとうとう出会所小屋跡にぃー

ひとしさんが 時計を見た。
「残りあと15分です」

登山口に停車しているバスのエンジン音が聞こえる・・・
ここからは 最後の激しい下りだ。
膝が弱っている ちがこさんには限界は近い

「ひとしさん、先に行って! なんとか間に合ったらバスにお願いして5分だけ待ってもらって! ちがこさんの足じゃ絶対間に合わないから・・・」

風のように ひとしさんは走った

『足の指の先が痛い、ええい! どうにでもなれ!』
もう ちがこさんだけじゃなくて ひとしさんだって限界だったのであ~る

足を引きずるようにして 最後の力をふりしぼって下る ちがこさん
エンジン音は まだちゃんと聞こえている・・・

『早く下らなくっちゃ! ひとしさん、間に合ったかな?』
時計を持たない ちがこさんには時間がわからないのであ~る。

あっ!
み、見えた!!


バス停に バスが停車、10名ほどの人が 林を見上げるようにして じっとこちらを見ていた。
(ちがこさん びっくり)

はぁ はぁ はぁ・・・

声が聞こえた。

「急がなくていいよぉー! ゆっくり下って」

涙がでてきた
まるで小学校のマラソン大会にビリでゴールした子供と同じ。

待っていてくれた人たちが拍手で迎えてくれた。
時刻は12時2分。
たった2分の遅刻だったけど ひとしさんが先に到着できていなかったら バスには乗ることができなかったもんねぇ・・・
これが 一度も休むことなく走り続けた ひとちがの結果であ~る

ひとしさんも笑っている。
「私は11時55分に到着できたんですよ、皆さん 私がまだ連れが下ってくるって言ったら信じてくれなくてね、その辺に隠れてるんじゃないのなんて・・・」

待っていてくださった井川観光協会の運転手さん、そして乗客の皆さん、本当にありがとうございました。



疲れきった体でバスの一番後の席に乗車、一緒に乗り合わせた 台風の中、お山を徘徊していたという東京の渡辺さんと 楽しく話をしながら畑薙の駐車場まで戻ることができた ひとちがであ~る
(よかった よかった)



林道を トレランの選手が走っている・・・
疲れきってヘロヘロだ。
それでも彼らは走り続けるのだ。
そう・・・
ゴールまで

がんばれぇーっ!!!

バスの中から大きく手を振って応援する。
目的が違っても 最後まで諦めないで がんばり抜くこと・・
体の限界への挑戦って なかなかできることじゃない!

今年の夏休みも 素晴しい経験と 素晴しい人たちに巡り会うことができたね ひとちが。
大・大・大満足の南アルプス山行でした


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