南信雪山紀行♪ 地獄極楽 前編

ひとちが

2015年01月15日 18:29

2015/01/11

七難
鬼面山
(赤石山脈南部エリア)

全山行 432回



鬼面山の情報はこちら


標高 鬼面山 1889.3m(1850mまで到達)
天気 曇り・雪
山行時間 7時間(休憩時間を含む)


〈コース〉虻川林道・第二駐車場下(8:15)-登山口(8:45)-
トチの木(9:30)-西尾根の稜(10:40-10:50)-展望地(1:00)-
ピストンで林道駐車スペース(3:15)




 「鬼」と名のつく山は多々あれど
これほど鬼らしい山はないだろう


それが厳冬期の 鬼面山 だ





伊那山脈の最高峰鬼面山 
南信の南アルプスの前に立ちはだかる山だ



この山は谷の奥にあったため 登山や信仰の対象には
ならなかったそうだが 近年 林道・山林作業道の開発で
日帰りの山として登山者が増える傾向にあるそうだ


一般的には国道152号の途中にある
地蔵峠から登るルートが使われる


しかぁ~し
今回 ひとちがは冬季に登るため地蔵峠までの道は
ゲートが閉鎖されているので無理
豊丘村からの虻川林道から攻めることにした



数日前 ちがこさんは豊丘村の役場に電話を入れた


あのー
ヘビ川林道は冬季閉鎖にはなりませんか?
車で駐車場まで行けます?



え゛? ヘビ川林道?
あ゛ー あ゛ー
ヘビ ぢゃなくて アブ ですよ 
アブ


初っ端から大恥をかいてしまった

*言い訳ですがガイドブックの文字が小さくて
老眼の ちがこさんには 虻が蛇 に見えたんですわ



まぁ いいです


4WDなら入れますよ
昨年の12月の降雪で雪が残ってますが
それなりの装備を持っていれば大丈夫です



役場の人が自信あり気に言った


そうなんですかー
よかったー
チェーンもシャベルもあるから大丈夫ですね



最後に役場の人が言った


山の雪の状態はわかりませんよ


林道の入口に到着

それまでは民家もあり雪もなくフツーの道路なので
特に問題もなく順調



野田の平キャンプ場方向に向かい
途中を虻川沿いに登山口までの林道を走る


まだキャンプ場の分岐まで行かない道もこの通り



ひどい落石 よけるにも道幅が狭いので
そのまま落石の上をタイヤで通過するしかない


いつ落ちてくるかわからない石を恐れて
ハンドルを握る ひとしさんも緊張気味


ガイドブックに書いてあるじゃないですか
悪路って


え? ごめん読まなかった


上るにつれ 融け残った雪が氷になり
つるつるのスケート場みたいな狭い林道が
標高を上げながら九十九に続いた


それでも うちらの車は無敵だ 


ますます落石はひどくなり
座布団級の鋭角の落石でとうとう先に進めなくなった


車から降りて落石を動かそうにも
重すぎてびくともしない


ダメだこりゃ


緊張が続いた運転で疲れ切った
ひとしさんが言った


これ以上は無理ですぅー
林道の安全な広い場所までバックして
歩いて登山口まで行きましょう



ふぁ~い 


ツルツルの狭い林道を横滑りしながらバックし
安全な林道脇に駐車完了


第一難所 
落石つるつる林道


あ゛―
大変だった
 



いきなりアイゼン装着の出発と
予想外の展開になったのも致し方ない


さっそく駐車場を通過した先にある登山口まで
つるつる林道を歩き出した


とはいえ ずーっと つるつるってわけでもない


陽当りのいい場所は雪や氷もなく
ゴロゴロと落石のひどい道



林道横の山斜面を見上げてみれば
白くいつ崩れてもおかしくないような岩が
こっちを睨んでいた




くわばら くわばら


なるべく刺激しないように通過
それでも時折ザザーっと崩れるのがコワい


ずんずん進んでいくと山から染み出た水が凍りつき
蛇の歯みたいなツララが何本も垂れ下がっている



これぞヘビ川林道
ぢゃなくて虻川林道
 



登山口に到着 

嬉しいのは進むべき方向に足跡があったこと



ふにゃぁ~ 大丈夫そうだね
足跡もあるし問題なさそうだよ



そうですかね
赤テープもあるみたいだし問題ないかな



まずは虻川を渡る



そこから先は虻川に沿って高巻きの狭い道を
落っこちないように進むわけ



ともかく道幅が狭いのと 半分雪が凍って
滑りやすいのでピッケルを使って
確実に進むしかない危険個所



無積雪期なら問題ないはず


第二難関 
高所から川に滑落しそうな道



あ゛―
コワかった




ようやく地に足がつくようなユルい道に変わった



おかげさまで足跡もバッチリなので
道迷いの心配もせずに済んだ


見上げるとこんな空



今日は曇りって言ってたから
展望あんまり期待してなかったけど
もしかするといいかもね



第一ポイント
豊丘村の天然記念物パワースポット



ふたりで幹に手を当て
木の温もりを感じた



順調に足跡を追い
赤テープを確認しながら進んでいく



最後の渉渡を終えると
そこからは急登の連続



山の急斜のとりつきにポールに
かけられていた数々の謎の品物



さぁー
登りますよぉ~




出だし雪はくるぶし程で固め
アイゼンを効かせて登れば問題なし


が 雪の下はアイスバーンなので
注意しながら登らなくていけませんな



100mごとに このような立派な看板



いつも使っているストックでは太刀打ちできないので
ピッケルをグサグサ刺しながら登る


標高が上がるにつれ傾斜が増すため
目の前は雪の壁のようだ



時々見えるのといえば



木の根っこが邪魔して登りにくい場所もありーの
つかみたくてもポキポキ折れてしまう木の枝ばかり



頼りにならない物ばかり
這い登っていくしかない




気温が一気に下がったような気がする


天気はやっぱり予報通りの曇り空
風も強く見上げると白い物が・・・



雪が降るなんて言いませんでしたよね


山だから 雪も降るよ


急登を登りきった場所は 第二ポイント
西尾根の稜 



ようやく座ることのできる場所


天気が急速に悪くなって寒くなってきたのと
頼りにしていた足跡がこの場所を最後になかったこともあり
ちょっぴり心がクジけた


もう諦めて下山しよーかな
ひとしさんはどう思ってるのかな?



たぶん行きたくないと思ってるよ


そうかな
でもここで敗退するのは納得できないから
もうちょっと がんばってみるね



あー そう 



全く足跡のない白い山
コースを確認できるのは ピラピラ風に揺れる
白ちゃけたビニール紐だけ



尾根に沿って登るしかないので
ここで登場 先頭ラッセル員 ひとしさん



急登だけど 後ろにさえ ひっくり返らなけりゃ
大丈夫そうだけど 下山の時は大丈夫かな?



たぶん大変だよ
もうヤメた方がいいよ



うるさいな 



第三難関
急登の連続



どこまで登るんだろね?



順調に登ってはきたものの
やはり雪山の急登ラッセルともなると
二倍近く時間がかかるのが悔しい



こんなでピークまで到達できるのかな?
ちゃんと ちがこさん下山のこと考えてるのかな?
もう私は温かい温泉の方がいいんですけど



先頭ラッセル員 ややへたれ



一向に登るのをヤメようとしない ちがこさんに
「もうヤメませんか?」と言えない ひとしさん



ひとちー 言えば
もうヤメようって




ダメですぅー
ちがこさんは自分が納得しないとヤメませんからね

そうだ 納得できることを探せばいいかも



いい案あるの?



まあね まかして下さい


しばらく登っていくと ひとしさんの足が止まった
大きな岩の横からトラバースして尾根上部に出るらしい


まず岩をトラバースする前に 岩まで到達するには
超危険な山斜面を横断しなければいけない



ね いい場所あったでしょ


ホントだね
これで諦めるかな



じーっと危険な山斜面を眺めてギリギリまで進んでみたものの
やはり危険で赤テープ通りに岩を巻くのは不可能だと思った



ぐるりと見上げると 岩方向に移動するのではなく
登りにくいとは思われたが そのまま尾根の急斜を
這い登れば岩をトラバースせずとも尾根上部に
出ることができそうに見えた


こっちから行ってみるよ


え゛ 登るんですか?


うん 私が行ってダメなら諦めるから


そう言うと腰丈まである深さの雪をもろともせず
ちがこさんは ずんずん登っていってしまった



あ゛―
ダメじゃん 作戦失敗



行けるよぉー


ちがこさんが叫ぶ声がした


シブシブと ひとしさんも続く


冬道は簡単に作れるからいいねぇ~
無積雪期じゃ こーはいかないもんね



第四難関
危険な大岩トラバース


こーなったらもう先に進むしかないね


再び急登ラッセル員を任された ひとしさん
必死に登り続ける



もう時間的にピークは無理じゃないかな
なんとかして諦めさせなきゃ



なんとかなりそう?


まぁね 今度こそ


目の前に大岩がある



登るのは大変そうだな
お尻の重い ちがこさんには登れないかも
もしかして諦めるかもね



そんな簡単に行くかな?
ちがこさん意地でも登るよ きっと



予想通り 大岩に向かって
這い登る ちがこさん



無積雪期ならいったいこの場所は
どんな風になっているのかな?

登れたよぉ~っ


シブシブ ひとしさんが後を追う


大丈夫ですか?
登ったら下ることも考えて下さいよ



わかってるしー 


第五難関
大岩までの這い登り


さてと 岩まで来たのはいいけど道がない



キョロキョロ見回すと

あった あった 


岩の横に白ちゃけたビニール紐が
ひょろっぴい木に巻き付いていた



こっちから通過するんだ


まだ行くつもりだよ
いいの? ひとち?



よくないですぅー


岩のコワい斜面を岩にしがみつきながらカニ歩き
更に尾根を登っていくと
目の前に鬼面山のピークが見えた



こーなったら進まないわけがない


気合が入った ちがこさん
ズンズン先頭ラッセル員を始めた



あと ちょっとで山頂だい♪



1800mを示す看板から100mは尾根を
登っただろうか?


イヤなものが目の前にある
またしても大岩



あれまぁ 岩の横はカニ歩きかー
踏み外せばお陀仏だね



ブツブツ言いながら先頭で進んでみた


岩の上部に上がるためには
氷のスベリ台みたいになってる岩の隙間を
なんとか這い登るしかない


げ 無理


カニ歩きして岩の前まで戻ると
ひとしさんに言った


ありゃ 登れん 


え゛?


あれほど諦めなかった ちがこさんが
山頂を目の前にして諦めようとするなんて

自分の目で確かめてしたかったのもある
私なら登れるかも ちょっと挑戦してみたい



危ないよ ひとち
ちがこさんが行けない場所はヤメた方がいいよ
ほら 虫倉山の橋の時 もそうだったじゃん



わかってますけど
男なら行ってみたい時もあるんですぅ



ちがこさんとチェンジして今度は
ひとしさんが岩の横をカニ歩きで移動し
岩の隙間のスベリ台を身体を突っ張りながら這い登る


な なんとか登れましたぁ~
でも景色よくありませ~ん
 



この先はどうなっているのか?
岩の展望地からは樹林帯で簡単にピークを
踏めたかもしれない



しかぁーし 
現実 岩の下でこのような状態で
動けないでいる ちがこさんがいた



やっぱ無理


いいですよ
もうタイムオーバーです
下りましょう



上から声がした


第六難関
大岩の氷のスベリ台


山頂を目前にして下山することに決定


ひとちが下山誘導しなくても
ちがこさん諦めたね



はい 三度目の正直じゃなくて 
三度目の岩 ですね



この後 困ったのは 
ひとしさんが氷のスベリ台を
なかなか降りれなかったこと


登らなきゃ よかったですぅー 


ほ~らね


二人で写真を撮るはずのピークに到達できなかったので 
少し下った1800mの標識で記念撮影



下山も予想通り大変だ
急登は急坂




手に持つピッケルは上部の歯の部分を雪に刺しブレーキ 
お尻をついて足はアイゼンでブレーキ



つかまれるような木もなく
雪に埋もれた木の根っこもあてにはならない


あまりにコワい時は腹を雪斜面につき
腹ばいになって下ることも多々



岩はツルツルに凍り突起もないので
つかまる場所もなくバランスを崩せば滑落





尻セードで下りたくても意外と
木の根っこが邪魔して滑れない



第六難関
急坂の恐怖


空はどんよりと薄暗い



よかったねぇー 下山決めて
ロープがあったら岩登れたかな?



そうかもしれませんね
でも時間ギリギリでしたから
これでよかったんですよ



まぁね~
また季節を変えて挑戦しようね



はい~



雪が降る



黒い岩が見えていた川の石も雪化粧



登りの時は異常なほど怖かった急登は
意外とそこまで怖くなく下れたのが不思議



帰りの高巻きの道も利き手側でピッケルを
突くことができたので安心だったよ



駐車場スペースに戻ると
白く雪をかぶったエクストレイルが待っていた


ただいま!



最後の第七難関
つるつる林道 お尻フリフリ


帰路の車の中は叫び声が響いた



お願いだから突っ込むときは山側にして
谷に落ちたら死ぬぅーっ
 


んなこといっても
こっちも必死なんですからぁー
 



厳冬期の鬼面山

七つもの難関がある
鬼の名にふさわしい山であった
 



翌日は好天の樹氷が美しい山を歩いたよ
空は紺碧 お楽しみにぃ~



この日の立ち寄り湯はこちら
昼神温泉 ゆったり~な昼神 
スキー帰りの人でいっぱいでした


この日の車泊地はこちら
ヘブンスそのはらスキー場
24時間使用可のトイレがあり快適な車泊ができます


極楽編はこちら


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