中年の証明♪ 後編

ひとちが

2014年05月14日 15:08

2014/05/03

勝手な解釈?
笊ヶ岳
(赤石山脈南部エリア)

全山行 409回



笊ヶ岳の情報はこちら
布引山の情報はこちら

前編はこちら



標高 布引山 2583.7m  笊ヶ岳 2629.0m 
天気 晴れ

山行時間  合計14時間30分
*布引山から登山口までは無積雪期通常のコースタイムであれば 
5時間程度で下山できる。
今回は残雪期+道迷いのため9時間半かかった。(約2倍)




〈コース〉布引山テント(5:00)-笊ヶ岳山頂(6:50-7:20)-
布引山テント(9:00-10:00)-2000mf付近まで降下(11:20-11:30)-
小ピーク下2300m地点まで登る(1:30)-桧横手山(2:20-2:30)-
カーブ地点(3:30)-山の神(4:30-4:45)-広河原(5:30-5:40)-
廃屋(6:50)-林道終点(7:00)-老平(7:30)





山に入ることは自己責任

コースは自己の体力と技術を考慮し
無理のないルートを選ぶこと

進む以上は 最後まで自分の足で歩き
他人に頼らず迷惑をかけないこと

これが山ヤの鉄則






後 編


夜 半
聞いたことのないような声で
動物が鳴いている


あ゛―
動物がテントに近寄ってきたみたいです
なんだろ? コワいですぅー




クマじゃないから別にいいじゃん


でもぉー
気になって


zzzzzz
いつのまにか 瀑睡




朝だぁー

テントから顔を出すと
オレンジ色の太陽



ほぼ雪山装備のテン泊のため荷物は多けれど 
足りない物・忘れ物もほとんどなく
快適な朝を迎えることができた
(うはは。)


おかげで ひとちはザックが重くて
ここまで大変だったんだもんねぇー



そうなんですぅー


それにしても今朝は 超元気



アタックザックだから軽くって
楽ちんですぅーっ!



あっ そう



布引山付近は森林限界
鞍部までは東西両側の景色を随所で堪能できる
(うは! うは!)


東側の景色は 今まさにご来光を迎えた
我がホームグラウンド富士山


きれいですねぇ~



森林限界とはいえ 全く木々がないわけでなく
木々の間に残る深い雪の稜線は歩きにくい
(ぶぅ)



ひとちががテントを張った布引山のピークの
少し先に単独者のテントが張られていた


同じように彼も 「いざ笊の山頂に向けて出発」
というタイミング


見れば足元はスノーシュー
自由にアイゼンとスノーシューを分離できる
便利なコンパクトタイプだ


こんなに雪が深くて
ズボズボだと思わなかったよね



まったくですぅ



ひとちがといえば 8本歯のアイゼンに
夏用ストック ピッケルなし


ありゃ ダメじゃん


おかげで ウマる 転ぶ は当たり前
スマートにスノーシューで山頂方向に向かっている
彼とはエラい違いだ


あ~ぁ
わかってたら せめてワカン持ってくれば
よかったよねぇー




山はそんなに甘くない


鞍部に向かって歩いているうちに
すっかり陽が昇った



目の前には笊の姿



今日も快晴
午後には天気は曇り予報なので
できるだけ早く下山したい所


西側は このような景色
南アルプス南部の山々が勢揃い
こんな間近で見たのは初めてだ



東西の山を交互に見ていると
すぐ先に 先行した彼が立ち止まり
やっぱり山を眺めている



そうなんだよねぇー


歩けば転び 進めばくすがり
ズボって ハマって
もー た~いへん




遊んでないし
気をつけてるつもりだしぃー



鞍部までたどりつくと
益々山の姿が大きくなった
(おぉ)



鞍部から先は急登


雪は見上げるような壁と化し
右は急な山斜面 左は絶壁なので
這い登って進むしかない



ぬぉーっ
なんとか這い登ったぞ


と ちょっと優越感に浸った


その先を見れば 手すりのない
スベリ台みたいな雪斜面
(げっ)


左右どちらに滑り落ちても
滑落死か?




登るのはいいとして
下る時は倍増の怖さかもね



こーゆー場合
アイゼンをきせて登りたい所


雪はユルユル


雪にアイゼンは刺さらず足が
ズルズルと滑る
(ひゃぁー)



無積雪期なら もっと簡単に
ピークを踏めるのかな?



登ったことないんだから
わかるわけないじゃん



あ そうか


とうとう念願だった笊ヶ岳の山頂



残念なことに 楽しみにしていた
山頂標識は雪の下


でわ お待たせの景色を
ご覧いただこう

じゃ~ん



これぞ 特級品の富士山の眺望
今まで眺めた富士山の中でも
ダントツ一番だ と思った


そしてこちらは南側
テン泊した布引山



笊ヶ岳がメインみたいな気もするけど
実はこの布引山までの登りが大変なのだ



笊ヶ岳はオマケかい?


そーじゃないけどね


そして こちらが南西から北西に向かって続く
南アルプス南部の山々







自分達が がんばって登ったことに
大満足 


山頂で合流した単独の彼としばしお話した


彼は オールシーズン日本アルプスを登り
経験豊富な実力ある山ヤだ と正直思った


その勝手な思い込みが後に仇となる 


テン場までの帰路はピストンとはいえ
ウマる ハマる ことに変わりはない
(ぶぅ。)



無積雪期なら3時間程度で往復できるコースタイムも
4時間と 大幅に足が出てしまい 悪戦苦闘



どんなに大変でも嬉しかったのは
富士山がいつも横にいること



さぁ テン場は近いよ
がんばろっか!




振り返ると だんだん遠くなる笊兄弟



またねぇ~♪
再度この山を登る日がくるのだろうか?
たぶん しばらくはこないと思うけど



バカ大変だもんね


置き去りにしたテントをたたみ
布引山にも別れを告げる



今出発すれば登山口に
3時すぎには到着できますね
雪があるから多少時間がかかっても
5時までには十分下れるはずです



うん
余裕だね
 



布引山のピークのすぐ先は
布引大崩れ」と呼ばれるガレ場



ここを起点に帰路の桧横手山方向と
青薙山方向に道は分岐している



いつものように 自分の目で赤テープを確認し
山の下山方向を見定めて進路をとれば
道間違いすることはなかったはず



ところが 


山頂でお話した単独の彼 下山時もほぼ 
ひとちがと同時出発で先行していた


登山者は前々日入った単独の二人のみ
トレースはあまりあてにならない

 
そこで 踏んだばかりの
彼のトレースを追っかけることにしたのだ


経験豊富な彼の後なら安心だね
赤テープ探さなくてもいいし
道迷いの心配もないもんね



勝手な思い込み 



後方では いつものように ちがこさんを
信じてついてくる ひとしさんがいる



ちゃんと足跡ありますか?


あるよー
まだ靴底の模様が消えない新しいのだから
見落すわけないじゃん



油断した 


あれよ あれよと言う間に
トレースは急斜面を下っていく


疑うことなく追う ひとちが



ん?

途中で異変に気付いた


こんな場所通ったかな?
斜めにトラバースして登った覚えないけど
もっと左に下らなきゃ変だよね?



どこでも同じように見えるもんです
でもおかしいですね
南西に下ってる気がします




だよね
地図だと尾根を東にカーブしながら下るはず
曲がるポイントがあるはずなんだけどな・・・



あれ?
尾根が右上に見えますよ



何か変だな
でもさー 先行者もここを確実に下ってるし
登り返したトレースもなし
もしかして東に山を周り込むつもりかな?




うじゃうじゃ討論するものの
やっぱり不安は隠しきれない


げっ
あれ見て



とんでもない物を見つけてしまった


左方向に大きな崩れ場
その上には たぶん青薙山方向へ
向かうであろう稜線が見えた



ということは・・・
思いっきり正規ルートとは違う
別斜面を下ってしまっているってこと?



そうみたいですぅ


慌てて地図を出し正置してみる


見上げると 本来通過しなきゃいけない
小ピークのとんがりが見えた



や やっぱ違うよ
山の反対側に下ってる



トレースを探した


さっきまで雪の上にくっきりついていたトレースは
標高を下げると雪と共に消え見当たらない


恐ろしいほどの急斜面を無理やり下ってしまったのだから
今更登り返すってわけにもいかない



どうしよう


どうします?


やっぱ尾根に戻ろうよ
登れそうな場所を選んで小ピーク方向に
登っていくしかないよ



え゛―
この荷物背負って
また登らなきゃいけないんですか?
もう限界ですぅー



仕方ないよ
このままトラバースして正規ルートに戻ろうとしても
果たして歩けるような場所があるかわかんないしぃ



決断したら登る


アイゼンを外し 雪のなくなった踏まれていない
フカフカの山斜面を必死に登っていく


ハァ ハァ ハァ


バリバリとヤブを押しのけ 尾根に向かって
ひたすら登っていくしかない


どのくらい時間が過ぎたのか?


すっかり気持ちが萎えてしまったのか
ひとしさんの足取りは重く
なかなか ちがこさんに追いつけない


ようやく尾根らしき場所に出た


このまま戻れば 正規ルートに戻れるはず
ファイトー!


自信があった
必ず赤テープはある


ねぇ がんばって登ろ


「信用ならぬ」といった顔でノロノロと
言葉なくひたすら登る ひとしさん


あったぁー


木についている赤テープ発見
正規ルートに戻れた


*ちなみにこれは ひとちがが道迷いしたルートです・・・


戻れる
時間はかかるだろうけど
必ず登山口へ下山できる




心配だったのは 道間違えして
樹林帯方向へ下ってしまった単独の彼のこと


登り返すこともせず そのまま深い森に
入って迷ってしまってはいないのか?


ともかく 今自分達にできることは
登山口までどんなに時間がかかろうと歩ききり 
この状況を誰かに伝えることだけ





時間が押しています
暗くなる前に下山できるでしょうか?



時計を見ながら ひとしさんが
ボソっとつぶやいた


休んでる間があったら少しでも下ろう



下っていく途中
数名の登山者とすれ違う


すれ違う」っていう表現は間違っていた
彼らは山の神までの急登でテントを上げることを断念し 
登山道の途中でテントを張っていたのだから



午後3時をすぎれば
山の夕暮れは早い
 


無理して布引山までテントを運ぶより
途中でビバーグする方がずっと利口な判断


山の神で手を併せた 


正規ルートに戻れた感謝と
単独の彼の無事を祈る



下りやすいジグザグの急坂も 
単なる枯葉が積もった足元の悪い道


ハァ ハァ ハァ


広河原付近にも同じように
ビバーグで夜を迎えようといている
登山者たちがテントを張る


ドカドカとスゴい勢いで下山する
ひとちがを テントの入口から見物


彼らは山頂の情報を少しでも聞きたいと
声をかけようと思ったのかもしれない


でもね 一刻も早く下山しなければ
山の夕暮れは待ってくれないのだ


ハァ ハァ ハァ


広河原の渡渉地点に来ると驚いた
前日より水が更に増水している 



渡渉時 水面に出ていた岩は
深い流れの中にあり 渡渉は困難を極めた


それでも渡らなきゃ
時間が押している

コワいなんて
言ってる場合ぢゃない 



渡渉地点を決め 一か八かで沢の流れに
ザボっ と両足突っ込んだ



ぬぉーっ 
つ つめたい
 


相変わらず ひとしさんは身軽に反対岸へ


ひとしさんにサポートしてもらい
なんとか 渡渉成功


上陸した山靴の中は まるで水槽のようで
歩くたび ぐちゃぐちゃ と楽器みたいだ


それでも先に進まねばならん


時刻は5時半
もう薄暗い



ここから先の道には ガレ場などの
危険地帯があったはず



躊躇しているヒマはない
一刻を要する 


見えにくくなっていく危ない登山道
それでもピッチを落とさず必死に歩いた


まだ危険な場所はありましたっけ?


危険地帯を通過するたびに
ひとしさんが声を上げる


たしか あの先にヤバい橋が・・・


行きに渡った危険な橋は確実に通過するため
帰路は崩れた橋の下に一端下りガレ場を登り返した


急がば回れ



足はフラフラ
鉄梯子・鉄の橋をクリアして
最後の吊り橋を渡った



ようやく廃屋に到着
時刻は6時50分 


林道までどのくらいですか?


あと10分
 


すっかり闇夜になった 


ヘッデン装着で林道終点まで下る
この先は平坦な林道 危ない箇所はない


暗やみの林道を大急ぎで歩く
午後7時半登山口
ゴール 


駐車場に戻ると 単独の彼の車が
予想通りポツンと残っている


やっぱり下山できなかったんだ
大丈夫かな?



あのまま樹林帯の奥深くに迷い込んだら
出てこれませんね
どうします?



携帯電話がつながらない
大急ぎで近くの宿泊施設に飛びこんだ


緊急事態発生 
警察に電話 単独の彼の状況を話した


とても疲れていた
それ以上に戻ってこない彼の事が心配だった


翌々日 警察に確認の電話を入れてみる


昨日 本人から電話がありましてね
ビバーグして登り返し下山したそうです



よかったぁー 
単独の彼は経験豊富な山ヤだ
もしかして警察に電話なんかしたのは
余計なおせっかいだったかも



いいじゃん
彼は無事に下山できたんだから



まあね


笊ヶ岳の老平には登山ポストがない


もし道迷いしたり 事故に巻き込まれても
誰にも連絡がつかなければ遭難になってしまう


今回の山歩きで どんなに大変な山も 
がんばれば登れる」ってことを証明した



もうひとつ 思い込みによる「勝手な解釈」は
危険だっていうこと


そして 万が一を想定して連絡がつくような
準備を万端にしなければいけないことも同時に痛感した


*GW中 その後同じように笊ヶ岳で遭難した方がいます。(50代・男性)
5月15日現在まだ行方不明、捜索活動が続いているそうです。
一日も早く発見、救助されることを願っています。
笊ヶ岳に登山予定のある方は下山する際 道迷い に十分注意して下さい。


遭難した方のその後はこちら



GW大変な山歩き終了


翌日から3日間 筋肉痛で変な生き物のように
なっている ひとちがであった
(あはは。。。)





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